先日、福岡国際センターでフクオカベンチャーマーケット、福岡アジアコンテンツマーケット2011が開催されました。
会場では、多くのベンチャー企業、そしてコンテンツベンダーが、ビジネスチャンスを求めて出展していました。私は、この会場に福岡の未来があると思います。私はNTT西日本という会社で12年間、お客様の企業の経営上の課題をITシステムで解決する方法をご提案するという仕事をやっていました。
仕事でのパートナーは、マイクロソフトやオラクルと言った、30年前は本当に小さなベンチャーだった企業ばかりです。今やそれらの企業は巨額の株式時価総額を持つ大企業に成長しました。そして、多くの雇用と税収をもたらしています。
出典:世界経済のネタ帳(http://ecodb.net/)
上記のグラフは、日本とアメリカ、中国の名目GDPの推移を表したものです。一目でわかるのは、青い線の日本の名目GDPが1995年をピークにほぼ横ばいであるのに対し、緑色の線のアメリカの名目GDPは2008年まで一貫して上昇し続けているという点です。
1995年はマイクロソフトがWindows95を発表し、誰もが簡単にパソコンでインターネットを利用出来るようになった年です。マイクロソフトはアメリカの会社であり、インターネットはアメリカが開発したコンピュータのネットワークです。1995年以降、アメリカは「インターネット上でのビジネス」という新しい産業分野を生み出し、GDPを成長させる原動力としてきました。
一方で日本は、製造業に替わる新しい経済成長の原動力となる産業を生み出せないまま、GDPは横ばいを続けています。つまり、日本は新しい企業、産業を生み出す力が弱いのです。
アメリカは「インターネット上でのビジネス」を新しい経済成長のエンジンとしています。その成長を支える企業は、GoogleであったりFacebookであったりと、10年前には影も形も無かった本当に新しい企業です。GoogleもFacebookも、学生が在学中に起業したベンチャー企業が急成長し、巨大な時価総額を誇る企業になりました。しかし、Googleの創業者であるラリー・ペイジやサーゲイ・ブリン、Facebookの創業者であるマーク・ザッカーバーグが会社を興した時に、二つの会社が急成長すると予測した人はほとんどいなかったでしょう。未来は誰にもわからないのです。
未来は誰にもわかりません。会社の未来も、誰にもわかりません。言い方を変えれば、全ての新しい企業に急成長するチャンスがある「かも」しれないのです。ひとつだけ言えることは、起業家が会社を興して新しいビジネスにチャレンジしない限り、新しい企業が急成長する「かも」しれない可能性自体が生まれないという事です。
ベンチャー企業は千三つと言われます。1000社創業して、生き残るのは3社ぐらいという意味です。私も大学時代に仲間が作ったインターネットベンチャーで働く機会がありましたが、今やその会社はありません。ベンチャー企業が成功する確率は、本当に少ない。これは事実です。しかし、新しいビジネスにチャレンジする人がいなければ、経済成長のエンジンとなる新しい企業、新しい産業は生まれてこないのです。
私は、今の日本で、そして福岡で最も貴重なのは、リスクを取って新しいビジネスにチャレンジする人だと考えています。就職人気ランキングで常に公務員が上位に位置するように、日本全体がリスクを避ける傾向にある中で、あえて上手くいくかどうかわからない新しいビジネスにチャレンジしようと志す人は、本当に貴重です。そのようなリスクテイカーが、新しい時代を切り開き、新しい繁栄をもたらすのです。
残念ながら、新しいビジネスにチャレンジしたい!と志す人々には、お金がない人達が多いです。そして、お金がなければ信用もありません。信用が無いから、銀行はお金を貸すことができません。不動産屋さんもリスクが高いので、オフィスを貸すことは難しいでしょう。これは仕方のないことです。銀行も不動産屋さんビジネスですから。
しかし、行政は違います。産業政策、地域振興政策としてリスクテイカーを全面的にバックアップしていかなければなりません。何故なら、非常に低い確率かもしれませんが、リスクテイカーの人達が興した会社が急成長して、地域に雇用と税収をもたらす「かも」しれないからです。その可能性を高めるためには、リスクテイカーの母数を増やすことが最も確実です。出来る限り多くの人達にリスクを取ってもらい、新しいビジネスにチャレンジしてもらう。そんな志を持つ人々を一人でも増やす。これが、最も確実な産業政策であり、地域振興政策なのです。
行政が特定の産業分野を支援しても、上手く行くとは限りません。未来は誰にもわからないのですから。であれば、どんなビジネスでもいいから、新しい事業にチャレンジしたい!という意欲を持つ人をバックアップしてあげたほうがいいと思われませんか?
そんなに上手く行くのか?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、私は実体験として、優れた起業家に率いられた会社は急成長する、という事を確信しています。8年前には誰も専属で担当するものがおらず、昔の縁でたまたま私が担当するようになった通販会社さんは、その後わずか3年で急成長し、今はNTTグループにとって大変なお得意様になられました。担当者である私は、通販会社さんの急成長のおかげで、毎年毎年、すごい金額の売り上げをあげさせていただきました。会社も、今までは全くノーマークだった会社が、わずか3年で超優良なお客様に成長されたので、ビックリしていました。
こんな会社があと100社ぐらいあれば、福岡市はアジアでの急成長都市になれるでしょう。市の借金もあっという間に還せますし、誰もが羨む福祉サービスを提供する事も出来るでしょう。
冗談ではなく、本当に新しいビジネス、新しい産業を産み育てる事は福岡市の未来にとって決定的に大事なのです。私は、わざわざリスクを取って新しいビジネスにチャレンジしたいという人達を徹底的にサポートしていきたい。フクオカベンチャーマーケット、福岡アジアコンテンツマーケット2011の会場に集まった企業で働く、彼ら、彼女らがこそが、福岡市の未来への希望なのです。