『ネット選挙の時代に、あらためて電子投票を考える』(カテゴリ:未分類)
- CNET【eデモクラシーの実現】より転載 -
ネット選挙の時代に、あらためて電子投票を考える
自宅で投票することや、複数候補への投票、順位付けによる投票やマイナス投票なんて一緒に考えみませんか?
電子投票で、最も望む結果を出すことができる選挙・投票の仕組みを考えてみましょう!
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インターネットによる選挙運動解禁の話が前向きに検討されている。
このことに関しては、
1、現在の選挙活動をただ単にインターネットでも行えるようにするだけのもの
2、インターネットの時代に合った選挙(及び政治活動)そのもののあり方について考えて行くもの
という二つの視点からそれぞれ同時に取り組む必要がある。
そもそも 2、の「どのような選挙を行うべきか」と言う議論こそ積極的に行わなければならないものと考えるが、それでは夏の参院選挙には間に合わず、結局何も変わらないままになってしまう恐れがある。1、の議論も行いつつ、 2、の視点を可能な限り盛り込んでいくことが現実的な取り組みと考えられる。
私のような地方議員が、地域の方とお会いして肌で日々受け取っている感触では、インターネット上での盛り上がりに比べ、ネット選挙解禁に対する人々の関心はそれほど高くない。これまで続いてきた政治や選挙に対する無関心や疎外感の延長なのかもしれないし、具体的な姿が見えてこないため参加や発言のしようがないのかもしれない。とにかく、世論の盛り上がりによる積極的な議論と、分かりやすい形での具体的なビジョンの提示が必要だ。インターネットによる話なのだから、インターネット上での議論は当然としても、インターネットとまったく縁のない生活を送っている方にも情報提供を行い、議論に参加してもらう必要がある。
さて、インターネットによる選挙運動の解禁に先駆けて、条例を定めた地方自治体限定としてではあるが、2002年より電子投票が実施されてきている。しかし、トラブルが相次ぐなどして、消極的な自治体が多い現状である。しかし、「ネット選挙解禁」というお話をさせていただいたときに、なぜかこの電子投票をイメージされた方がおられて、私は面白く感じた。インターネットで選挙するのだから、インターネットで候補者を選び、そのまま投票したい。これはすごく素直な発想だ。
ここで、これまで議論されてきた電子投票の利点を挙げると、以下のようなものになる。
・開票が正確で早い。
(人の手作業による数え間違い等の排除。機械的な計算による平等性。)
・画面を見て選ぶと言う分かりやすさ。
・障がい者等への配慮。投票バリアフリーの実現。
・書き間違いや誤字脱字、判読不明等による無効票の排除。
・投票情報の詳細で確実な保存、再現、他。
また、投票所の実際としての課題はあるとしても、候補者を選択する画面に、名前だけでなく、候補者の顔写真や選挙広報、ポスタービラ、また政見放送のような動画や音声メッセージなどの情報を表示させて比較検討することだって可能である。また、これは確認を要するものだが、外国で電子投票が普及している理由には、複数の言語が存在する国での選挙や識字率の低い国での選挙では、候補者名を読んだり書いたりすることよりも、候補者の顔を表示させ選択できる機能が有効である、という話も聞いたことがある。
また、インターネットにより自宅等の不特定多数の場所から投票が行えるということは大きな利点であり魅力的な話であるが、それが買収につながったり、脅迫によるものでないか、「密室で投票が行われる」と言うことに対する課題と対策について、今後、更に広い議論と人々の納得が必要になるだろう。
一方、電子投票の欠点は以下のようになる。
・システム全体の安全性透明性確保への課題。
・頻発したトラブルに見られるような技術的未成熟への対策。
・電子機器等への不慣れによることが原因の投票棄権の危険性。
・紙に名前を書いて投票箱に入れるという行為自体を尊重する伝統意識への配慮、他。
また、国政選挙の場合、全国一斉となるため機材の使いまわし等が出来ず、その保管やメンテナンス費用の非効率も指摘されている。
以上、電子投票については、利点としての「開票作業の迅速性正確性」、課題としての「技術の安全性安定性」と言った議論が多く、これまでの紙による投票を電子機器にただ単に置き換えるだけの話が中心となっていて、トラブルのリスクや対策、費用対効果についてがその議論の具体的な内容であった。しかし、インターネットによる政治活動や選挙について議論をしようという現在にあっては、やはり電子投票についても、それが持つ可能性についてあらためて検討をして行きたいと思う。
ここでは、その論点を以下の2点に絞ってみたい。
1、インターネットによる投票の可能性
2、電子投票の持つ特徴を生かした投票制度の検討
1、については社会的なイメージはすでに出来つつある。インターネットで品物を選び、購入するのと同じイメージだ。しかし、こうした手続きで選挙の投票を行った場合に、どのような問題があり、また確立しなければならない技術はどのようなものか、といった議論がある。技術の進歩を見ていると、すぐにもこうした方法での選挙・投票の仕組みについて検討しなければいけないように感じられる。むしろ携帯電話やその他の情報通信技術の進歩により、もたらされた多様性からの検討の方が複雑で難しくなってくるくらいかもしれない。
このインターネットで投票するというイメージ通りの選挙投票こそ人々の望む姿であるならば、その実現のための議論を進めて行かなければならない。
2、についてはほとんどその議論を聞いたことがない。電子投票では、文字通り投票情報が電子化される。そのことが持つ可能性は絶大だ。これまで、紙に名前や政党名を書き、手作業でその紙を集め数える、と言う投開票の制約から解き放たれることになるからだ。一言で言えば、人々が最も望む結果を出すことができる投票の仕組みを実現できるようになるのだ。定数が何十名と言う地方選挙で一名の名前だけを書く、もうこんな投票制度にこだわる必要がなくなるのだ。
地方選挙では、定数が数十名と言うことがある。その場合、○人まで投票可とすることもできるし、また、一人一票ではなく例えば一人十票とし、そこでその十票を自由に振り分けて投票することも可能となる。ここでは、一人に十票投票することもできるし、十人に一票ずつ、または一人に七票一人に二票もう一人に一票、と言った投票もできるのだ。
また「この人だけは絶対に反対」、と言う場合にマイナス票を投じるような仕組みも考えられるだろう。
一番現実的な投票方式として、単記移譲式投票と呼ばれるものがある。これは、自分の投じた候補者が落選してしまうとその票が死票となってしまうため、少しでもその死票を減らすための工夫である。
投票者は候補者にランク付け投票を行う。まず、一位選考の計算により最下位となった候補者が落選決定となる。その落選者へ投じた投票者の票は、第二位選考者へと票の追加が行われる。その後の二回目の計算により次に最下位となった候補者が更に新たな落選者と決定する。その落選者に投票した投票者の票が次の選考者へと票の追加が行われ、三回目の計算が行われる。その計算により最下位の者が新たな落選者となり…、と言った計算を、規定の当選者(落選者)数に至るまで繰り返して行く。一度落選者に決定したものへの票の追加はない。また、選考順位が下がるごとに追加票の価値を減算して行く等の規定は必要だ。しかし、これらの計算は紙の投票ではまったく複雑な作業となるが、電子投票ならすぐに結果が出せるのである。
また一人区の国政選挙や首長選挙のように、一人を選出する選挙の投票であっても、一人だけに投票することがもっとも人々の望む結果をもたらすとは限らない。例えば政策の似通った二人と、まったく政策の異なる極端な候補の三名が立候補した場合、大多数が支持する政策の似た二人が票割れを起こし、少数派の支持する第三の候補が当選するかもしれない。この選挙でマイナス票を投じることが出来たり、先の単記移譲式投票によるランク付け投票を行うことが出来ていたら、その方が人々が実際に望んでいる結果となったと言うことはないだろうか?
少なくとも、電子投票ではこうした多様な投票制度が可能となるのであり、その議論はまだほとんど行われていないのである。
私たちは、ただ単に現在の選挙運動をインターネットで行うだけの改革に終わらせず、現在の私たちが実現しうるその可能性を最大限引き出して実現できる、私たちが望む政治や選挙のあり方について考え議論して行く必要があると思う。
そのことはとても私たちの想像力やチャレンジ精神を刺激する内容で、参加し発言すること自体に意義と喜びがあるものだと私は考えている。
皆さんは、どのようにお考えでしょうか?
※CNET【eデモクラシーの実現】より転載。
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